そして、また4月


"So, what?"

彼女はよくそう言った。
吊り上げた眉とすくめた肩が怒りに溢れすぎていて妙にかわいかった。

4月。

やたらと元気のいい新米駅員のかけ声や、
着崩れしていないやぼったい制服の一群や、
まどろっこしい新入社員の電話の応対...
すべてが僕のリズムを狂わせ、苛立ちをつのらせる。

そんなとき僕は、彼女のあの表情としぐさを思い浮かべ、
タバコをくわえて一息入れる。
そうして吸い終わると、僕はことさら穏やかな気持ちになって、
やたらと丁寧に火を揉み消して、再び立ち上がることができるのだ。

"So, what?"
4月に出会い4月に別れた彼女の思わぬ置き土産に、
今年もまた救われる僕だけど。