初めての朝


教室に入ると、彼は一番後ろの窓際の席に座って本を読んでいた。
まだ明かりの点いていない教室は薄暗く、
彼の座っている席の回りだけが、
朝の柔らかい光に包まれて浮かんでいるように見えた。
「おはよう。」
と、私は彼に声を掛けたが、
彼はちらりと本から目を上げただけだった。


遠くから鳥のさえずりが聞こえてくる。


歓びがこぼれ落ちんばかりのその響きが、
少しずつ近付いてきて、僕を呼び覚ました。
目を開けると、一つしかない窓から射し込む朝日が、
白いレースのカーテンの上に踊っていた。

僕は、彼女の静かな寝息を確かめて、読みかけの本をそっと開いた。