First Step
飛行機を降りて空港を出ると、
車寄せに赤いスポーツカーが停まっていて、
あのとき愛した少年が、立派な青年になって私を迎えてくれる。
そんな夢を見た。
それは妙にリアルで、ラガーディア空港の喧噪も、色も音も空気も、
そっくりそのまま鮮やかに脳裏に広がるのが分かった。
"Hey, how are you?"
それが初めての挨拶だった。
私はあてもなく飛行機に乗り、ニューヨークに向かっている。
飛行機を降りても、迎えなどいないことは分かっているし、
住む場所さえも決めていない。
第一、誰にも知らせていないのだ。
事実、少年は立派な大人になり、結婚して既に離婚も経験したと
風の便りに伝え聞いたが、会いに行くつもりは全くなかった。
もうたぶん未知の世界に様変わりしているだろうあの土地で、
人知れず第二の人生の、初めの一歩を踏み出すのだから。
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