折り返し地点


「6月が来ると、一年がほんと長いって思わない?」
彼女は、不満げに眉をひそめて僕に言った。

「そうかな?」
僕は、彼女の意味するところが分からず、とりあえずそう答えてみる。

「だって、せっかく夏がもうすぐそこに来てるっていうのに、じらされ
てるみたいで、私は嫌いよ。」と彼女は続けた。

(あぁ、なるほど) と僕は思ったが、あっという間に終わってしまう夏よりも、
スローモーションで流れる6月の方が、今の僕にはありがたかった。

折り返したとたん、一気に堕ちていく自分の姿が、脳裏にちらりと
かすめていたから。