スポットライト


彼は、いつもスポットライトの中にいた。
彼はバンドでギターを弾き、よくしゃべり、何かにつけて先頭に立った。
彼の回りにはいつも多くの観客や取り巻き連中がいて、
彼の話しに耳を傾け、馬鹿丁寧にいちいち深々と頷いた。
僕は、彼の話に特に興味がなかったので、静かに絵を描いて毎日を過ごした。

やがて、卒業の日がやってきた。
謝恩会で、彼の周囲は相変わらず賑わっていたが、
彼は突然、取り巻きを抜け出して僕のところに現れ、
「おまえって奴は、本当にすごいよなぁ... 」と、語り始めた。

僕は、朝方になるまで彼の話を聞くでもなく、
ただただ、彼の盃に酒を注ぎ続けた。
彼の話は相変わらず僕の心を打たなかったが、
彼のギターの音色だけは、僕の心にしっかりと刻まれている。