春の嵐


「俺は絵描きだからさ」と彼は言う。
型破りなビートと不協和音は、いつでも私の心を吸い寄せる。
重く、内側から突いてくるビートが体内にこだまして、
私の心に恍惚とざわめきをもたらす。
まったくの異質さが、ある部分、ある瞬間に、必ず共鳴することを
本能が伝えてくるからだ。

けだし、春の嵐は横暴で、
すべてを舞い上げ、舞い上がったすべてを地に叩きつける。
まやかしの春の陽気に誘われて散歩に出ると、
突然の春風が冷たさを増すように。

春は、はかなく、通り過ぎる季節。
冬の間に備蓄したエネルギーが猛威をふるい、
やがて平穏を敷き詰める。


私は、共鳴に歌で応じ、絡めた視線を解いて、その場を後にした。


やがて本物の春が薄桃色のヴェールを纏う頃、
私は文字を綴り、彼は絵を描くのだろう。