旅支度
その小説が、あまりにあっけなく幕を閉じたので、 僕は、しばらく茫然と、窓の外を見つめるしかなかった。 それが僕の鞄の中にある最後の本だった。 電車を降りると、当たり前のように本屋がそこにあり、 僕は、来月また始まる新しい旅のために、 結末の分からない何冊かの本を選りすぐって、鞄に詰め直した。