境界線
越えようと思えば越えられる、崩そうと思えば崩してしまえる。そんな 境界線をのらりくらりと浮遊していた。
五月の陽気は、私の冷めた心に風穴を開けたが、一方で、暖かさに身を 任せて泳ぎ始めることを促してはいなかった。 だからといって、冷たく固く閉じた空間に逆戻りすることは、私には躊 躇われてならないのだった。
曇りのち晴れ、晴れのち雨。
この緊張感を持続する五月に、留まるすべはないのだろうけれど。